マターボード

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概要

波動関数の収縮のメカニズムを解明する際の超選択則とはヒルベルト空間上のエルミート演算子がオブザーバブルである為の必要条件であり、不確定性原理において意味のある観測が不可能である点が量子力学の観測問題としてあげられる。一般的な素粒子の粒子反粒子振動では中性K中間子の毎秒数兆回程度の粒子混合により粒子と反粒子の双方が崩壊しえる。エヴェレットの多世界解釈、コペンハーゲン解釈、さらには虚空機関元総長ルーサーによる全知論にて語られるように、量子エンタングルメントの混合比率の制御をスーパーデンスコーディングを用いた量子ビット演算=マターコンピューティング(因果演算)技術を使った、マクロ世界情報を認知意味論的概念化することによって、任意の状態改変を行えるようにしたインターフェースをマターボードと言う。


マターコンピューティング

因果演算におけるマターコンピューティングの「マター」の語源はラテン語のマテリアであり、形相と相関的に用いられる質料(因素)を指す。これは四因で構成される。質料因(ヒュレー)、形相因(エイドス)、作用因(アルケー)、目的因(テロス)である。このうちの質料因については物理的な事象生成要因と言えるが、事象の種子をデュミナス、開花した現実をエネルゲイアという概念で現す。全ての事象におけるデュミナスには遺伝子に相当するアカシックゲノムによって後に発展するエネルゲイアへ至る全ての道筋が記されている。

毎秒数万キュービットの演算可能な量子コンピュータの基礎理論は光歴紀元前より存在していた。フォトン素粒子の超時空性質が発見されるとアカシックゲノムの解析を行う研究が行われるも、あまりに膨大な演算対象への挑戦であり、最初の事象改変を達成した際には、わずかフォトン粒子量の1億分の1程度の変化をもたらすにすぎなかったが、将来的に完成されるであろう神託機械 (計算複雑性理論や計算可能性理論における抽象機械の一種であり、決定問題の研究で使われる。チューリングマシンに神託 (oracle) と呼ばれるブラックボックスが付加されたもの) への確実なる前進として歴史に輝かしい一歩を記す事となった。この時代に外宇宙への進出を開始した船団群の名称にオラクル (神託) が採用されるほどに、当時の最先端物理が世間においても大きく取り上げられていたことが伺える。


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惑星シオン

失われた歴史に曰く、太古のフォトナー達が発見した惑星Xは、広大な電解質の水溶液に覆われた海洋惑星であり、その特殊なイオン交換作用を観測できたとき、この惑星全体が、非ノイマン型のニューロコンピュータと同様、ヒトの脳機能と類似した誤差逆転伝搬法を用いた多層パーセプトロン思考を行っている群知能、つまり生命体であることが判明する。X性イオン化惑星という名称はその知性を確認できた時、X-ion、シオンという固有名を与えられた。シオンとの交流を行った幾つかの研究グループのうち、マクスウェル研究所、ラプラス機構、オラクル審議会といった名だたる名門学派を差し置き、フォトン技術の総監権限をもつ虚空機関が研究に関する実権を掌握する。オラクル船団の旗艦たるマザーシップは、全宇宙の生命種の保全の為の超巨大な恒温器 (インキュベーター) であったが、虚空機関は惑星シオンを取り込むことにより、超演算能力をもつマターコンピューター機能の追加、そして静電荷粒子推進器のプレグナントコアドライブ (アルゴン、キセノン、クリプトン、フォトン等のプラズマになりやすい元素を推進剤として使用する) として、無限の動力を各アークスシップに伝達できるように改良してしまう。


シオンがマターボードを配布した相手について

長い歴史においてシオンは自らが解析したアカシックゲノムにより、現宇宙のエネルゲイアに終末を見出すと、マターコンピューティングによる危機回避を模索する。果たしてどのような危機が未来において観測されたのか、それは未だ不明ではある。しかし、全知たるシオンは演算のコアであり自らを演算対象とした場合は循環参照を引き起こす。その為、危機回避は演算外の第三者の存在が不可欠である。マターボードを取り扱う為の資格者はまず第一にフォトン特質を持つ必要がある。次には改変対象になる事象種子のデュミナスと関連の深い立場であるべきであろう。ここではマトイというキーマターと接触が容易である、第三世代アークスが選定対象となった。しかし一番の理解者であったはずのルーサーは宇宙の危機については興味を示さず、むしろダーカーの歪曲収差波動によるD因子侵食は自らの研究に都合が良く、ここでシオンとの協調は破綻を見ることとなった。

シオンが接触対象と会話をする時、群知能生命であるシオンは自らのわずか0.01%未満の分体をアークスシップに送り込むが、群体より離れたシオンは全演算能力の数億分の一の知能しか持ち得ない状態となり、全うな会話すら困難となった。マターボードによる歴史改変はその技術的困難さよりも、実行者の意志力、つまり動機が問題となった。マターボードによる歴史改変・危機回避の大義についてシオンは詳しく語る知能を持てない。断片的な情報を伝えるだけで、対象人物の行動動機を誘発することは困難を極めた。その為、シオンは同じ時空への多重アクセスを行い、同日同時刻同場所においてたまたまその場に居合わせた可能性を持つ人物に何千何万という試行の元にマターボードを配布することとなった。同時に異なる人物にマターボードを受け渡す事により、その対象者は通常の時空流から独立した存在と化してしまう。同じ脚本だが異なる出演者による同時上映の劇場。多重世界における同時進行の物語。キーマターの回収をおこなう一瞬のみは全時空におけるマターボード使役者の行動は一致するが、それ以外は異なる展開の物語となる。宇宙に存在する素粒子状態の最も都合の良い部分のみを取り出す事で、全員が主人公でありうるのだ。例えば超越数たる円周率は無限の数列の中にはカオス理論に基づき、ある程度の数列の出現確率に偏りを見出しつつも、ほぼ等しいのである。だが、無限の数列の中に生じる一時の偏りを取り出すならば、アスキーコードに変換した時に、シェイクスピアの戯曲全章を読み取る事もできるはずである。フォトン素粒子に内包されるアカシックゲノムにおいても同じである。ルーサー事件の最大の被害者にして英雄として世間を賑やかしたあの人物も、個々の主観においては違う人物に映るであろう。これはクオリア (感覚質) によって共通認識される現象的側面において、矛盾を生じない。

  • 最終更新:2014-12-26 01:58:58

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